【京大生オンライン】遺伝情報とDNA【高校生物】

京大生オンライン塾の増本です!
新型コロナウイルスワクチンが出回り始めた際に報道番組等でもよく聞かれた、mRNAという言葉を覚えている方もいらっしゃるかもしれませんが、今回はmRNAも登場する遺伝分野について話していこうと思います。
①DNAとRNA
DNAやRNAという単語はどこかで耳にしたことのある単語だと思いますが、いずれも核酸と呼ばれる物質の仲間で、生物の遺伝子の本体となっています。正式名称をDNAはデオキシリボ核酸、RNAはリボ核酸といいます。DNAは二重らせん構造という特徴的な構造を持ちます。糖とリン酸が交互に連なって鎖のような構造をつくり、二本の鎖をそれぞれの糖と結合した塩基どうしが結びつくことでハシゴのような構造となります。これがおよそ10塩基ごとにひねられるのでらせん構造ができます。DNAの塩基にはアデニン(A)、チミン(T)、グアニン(G)、シトシン(C)という四種類があり、AとT、GとCの組み合わせでのみ結合します。どの順番でこの塩基の組み合わせがくるのかが、遺伝情報としてDNAに刻まれているわけです。
②遺伝情報の流れ
「セントラルドグマ」という単語が、遺伝情報の流れをとらえたものとして重要ですが、私は新エヴァンゲリオン劇場版・序でこの言葉を初めて知ったので、聞いたことのある方がいらっしゃるかもしれませんね。DNAの遺伝情報が細胞の核においてRNAに置き換えられ(転写)、RNAからリボソームにおいてタンパク質がつくられます(翻訳)(※このときのRNAを特にmRNAと呼びます)。基本的にはこの流れが一方向であり、この流れのことをセントラルドグマと呼びます。近年この流れの逆、つまりRNAからDNAへの流れをもつレトロウイルスと呼ばれるウイルスも発見されたりしています。(ちなみにエヴァではNERVという組織の、建物の構造の名称として登場しています。)
③DNAのコピー
DNAのコピー、つまり複製の仕組みはやや複雑ですが、この仕組みを理解すると生命の神秘に向き合ったように感じることができます。DNAは先ほども述べたようにAとT、GとCという組み合わせが決まっているため、日本の鎖のうち、片方の塩基の並びからもう一方の塩基の並びを再現することができます。DNAがコピーされるとき、一方の鎖をもとに複製を行うため、半保存的複製と呼ばれます。一組二本の鎖から、それぞれ一本の鎖をもとに相方となる鎖をつくり、二組四本のDNAがつくられる、というわけです。まず、二本の鎖がDNAヘリカーゼというタンパク質により一本ずつに分けられ、次にDNAポリメラーゼというタンパク質が一本鎖DNAに結合して相方となる鎖を合成していきます。DNAポリメラーゼは二本鎖になっている状態からでないと合成を開始できないため、短いRNA(プライマー)がくっついた状態になってから相方のDNAの合成を始めます。(プライマーは複製終了後消えていきます。)
④細胞の寿命とがん
先ほど出てきたプライマーですが、一本の鎖の一部に結合して複製が終わった後に消えていくという説明をしました。実はここに細胞の寿命がかかわっているのではないか、という予想がされています。プライマーが結合していた部分は相方の鎖がいないため、一部分だけ複製されません。その対策として、DNA鎖の端には、テロメアという不必要な塩基の並びが存在しており、この部分が複製されずに短くなっていくようになっているのです。ですが、この部分すらなくなってしまうと、DNAのうち生きるのに必要な情報を持つ部分も失われていってしまうために、死につながってしまいます。そのため、このテロメアが細胞の寿命を決めているのではないかと考えられるのです。
がん細胞は、無限に増殖することができるというのが特徴の一つですが、なぜテロメアという寿命が存在するはずであるのに増殖に上限がないのでしょうか。これには、テロメアーゼと呼ばれる酵素が関係しています。なんとテロメアーゼは先ほどのテロメアを合成し付加することができるのです。そのためにテロメアが尽きることがなく、無限に増殖できるのです。また、がん細胞以外に生殖細胞でもテロメアーゼがはたらいています。
◆まとめ
今回はDNAやRNAなどが登場する遺伝分野のお話をしました。また次回生物の面白さを伝えられるようなお話ができればと思うので、ぜひのぞきにいらしてください。
それでは。