【京大生オンライン】地球生命誕生からの進化の流れ【高校生物】

京大生オンライン塾の増本です!
現在、大学で細胞レベルから生物学を学んでいる私ですが、高校時代特に好きでかつ得意科目であった生物について、いろいろな話をしようと思います。理系生物選択者は比較的少ないので、このブログを通して生物学に興味を持っていただける学生さんが増えれば幸いです。また、現在高校で生物を学んでいる方にも役に立つような内容になればと思います。
今回は、地球上における生命の誕生からの進化の大まかな流れをまとめようと思います。
①生命の誕生
46億年前の地球の誕生から最初の生命が誕生するまで、なんと6億年もかかっているといわれています。それほど初期地球の環境は厳しかったわけですが、その原始生物の誕生も偶然の産物だったとされています。というのも、たまたま脂質の膜ができ、たまたまRNAやDNAなどの自己増殖能力を獲得した、というように必然性を説明できないのです。偶然誕生した原始生物ですが、有機物を取り込み分解し、エネルギーを獲得して増殖するという生命活動をしっかりと行い、現在までつなげてきたわけです。
②嫌気性細菌からシアノバクテリアまで
原始地球は現在の地球と大気の組成が異なり、酸素がほとんど存在していませんでした。そのため、初期生物はみな嫌気性細菌(酸素の取り込みを必要としない細菌、現在も土壌や海底火山等に存在する)であったと考えられます。海水中の豊富な有機物を取り込み嫌気的に分解する細菌のほかに、化学エネルギーや光エネルギーを利用して有機物を合成する(つまり嫌気性細菌と逆の行為を行う)化学合成細菌や光合成細菌(「こうごうせい」ではなく「ひかりごうせい」、窒素を利用するものがみられる)も発生しました。ただ、従属栄養生物(有機物を分解する)と独立栄養生物(有機物を合成する)のどちらが先に誕生したのかははっきりとわかっていません。
その後、植物の直接の祖先となるシアノバクテリアが誕生しました。シアノバクテリアは、豊富に存在する水を利用して光合成をおこない、有機物を合成し自らのエネルギー源としました。ここでようやく酸素を発生させる生物が現れ、またシアノバクテリアが繫栄したことで海中、大気中に酸素が蓄積されることとなったのです。これを「酸素革命」と呼びます。
③好気性細菌の出現から真核生物の出現へ
シアノバクテリアのはたらきにより酸素が増加していった海中では、酸素を使って有機物を分解する好気性細菌が誕生しました。これによりさらに多様化が進み、DNAを核で包んだ真核生物が誕生していきました。私たちヒトを含む多細胞生物は原始生物の誕生から30億年後、今から10億年前だとされています。この頃には大気中の酸素が変化したオゾン層が形成され、有害な紫外線を吸収してくれたために、生物の陸上進出が可能となりました。まずは植物が、続いて両生類が陸上に進出し、さらなる進化を遂げることができたのです。
④細胞内共生説
現在の植物や動物の一つ一つの細胞には、それぞれミトコンドリア(呼吸において酸素を消費しエネルギーを取り出す)や葉緑体(光合成によって有機物を合成し、副産物として酸素を放出する)といった、細胞内小器官と呼ばれる膜につつまれた小さな構造がみられます。ほかにも様々な細胞内小器官がありますが、ほとんどが一枚の膜に包まれているのに対し、ミトコンドリアや葉緑体は二重の膜を持つという不思議な点があります。この謎を説明するものとして、L.マーグリス(1938~2011)が提唱した細胞内共生説というものがあります。これは、ミトコンドリアは酸素を用いて有機物を分解する好気性細菌を、葉緑体は光合成をしていたシアノバクテリアをそれぞれ祖先の細胞内に取り込んだ、とする説です。もともと一枚の膜に包まれた細菌が、祖先の細胞膜を巻き込みながら入り込んできたために二重膜になっているという説明がされています。
これは単なる予想ではなく、以下の五つの事実を根拠としています。
1.ミトコンドリアや葉緑体は、細胞の核のDNAと異なるDNAを持つ。
2.ミトコンドリアや葉緑体は二重の膜を持つが、内側と外側で成分が異なる。
3.ミトコンドリアや葉緑体は、細胞の分裂とは別に独自に分裂、増殖できる。
4.ミトコンドリアや葉緑体は細胞のものとは別に独自のリボソーム(DNAの情報をもとにタンパク質を合成する) を持つが、このリボソームは原核生物のものに近い。(好気性細菌やシアノバクテリアは原核生物)
5.現在でも、細胞内にほかの単細胞生物が共生している例がみられる。
こういった事実から細胞内共生説が支持されており、こういった共生が起こったことにより、単純な生物しかいなかった地球上に複雑な形態をもつ多細胞生物が誕生したわけなのです。
◆まとめ
今回は、生命の誕生から多細胞生物の陸上進出までの流れを大まかに話してみました。これを読んでいただいた方が、少しでも面白い、参考になったと感じていただけたら嬉しいです。次回もぜひ読んでいただきたいです。
それでは。
